内容がほとんど変わらないのに、毎回ゼロから作り直している報告書。 メールで送れば済むはずなのに、なぜか印刷してハンコをもらうという謎のルール。 担当者しか知らない、ブラックボックス化した作業手順…。
あなたの職場に、そんな「なぜか、なんとなく続いている非効率な作業」はありませんか?
「業務改善」と聞くと、大掛かりなシステム導入や、コンサルタントがやるような難しいことだと感じてしまうかもしれません。
しかし、本当に効果のある業務改善は、いつだって現場の、あなたの「これ、意味あるのかな?」という、ほんの小さな“違和感”から始まります。
この記事は、「改善なんて自分には無理」と思っているあなたのための、実践的な入門ガイドです。
- あなたの日常業務に潜む「ムダ」を発見するための、具体的な視点がわかります。
- どんな業務にも応用できる、改善案を生み出すための「魔法のフレームワーク」が手に入ります。
- あなたの「気づき」を、周囲から評価される「成果」に変えるための、具体的な伝え方がわかります。
その「なんとなく続けている作業」が、あなたの給料を溶かしている
まず、厳しい現実からお話しなければなりません。あなたが「前任者から引き継いだから」「昔からこうだから」という理由だけで続けているその作業が、会社の貴重なリソース(時間=人件費)を静かに、しかし確実に蝕んでいるかもしれないのです。
「忙しい」と「仕事をしている」は違う
私たちは、忙しく手を動かしていると「仕事をしている」と安心してしまいがちです。しかし、経営者の視点で見れば、成果に繋がらない作業に費やされた時間は、すべて「コスト(損失)」です。
- 月に10時間の「探し物」の時間
- 月に5時間の「データの二重入力」
- 月に3時間の「不要な会議」
これらは、あなたの給料の一部が、文字通り「ムダ」に溶けている状態なのです。
「改善の種」は、あなたの“不満”の中にある
しかし、これはチャンスでもあります。なぜなら、現場で日々その「ムダ」に直面し、「もっと楽にできないか?」という不満を感じているあなたこそが、会社にとって最も価値のある「改善の種」を発見できる人物だからです。
あなたのその「違和感」は、会社のコストを削減し、生産性を向上させる、非常に価値のある「宝の山」なのです。
【改善の思考法】“ムダ”を“価値”に変える魔法のフレームワーク「ECRS(イクルス)」
「改善の種」を見つけたら、次にそれを具体的な「改善案」へと昇華させるための、思考のフレームワークをご紹介します。それが、業務改善の現場で広く使われている「ECRS(イクルス)の原則」です。
これは、あなたの目の前にある業務を、以下の4つの視点で問い直す、シンプルで強力なツールです。
1.【E】Eliminate(なくせないか?)
最も効果が高い、究極の改善です。
- 問いかけ: 「そもそも、この作業は本当に必要か?」「これをやめたら、誰が、具体的にどう困るのか?」
- 実践例:
- Before: 誰も読んでいない日報を、毎日30分かけて作成していた。
- After: 関係者にヒアリングした結果、不要であることが判明。日報作成業務そのものを廃止し、月10時間の工数を削減した。
2.【C】Combine(一緒にできないか?まとめることはできないか?)
似たような作業や、分散している業務を一つにまとめます。
- 問いかけ: 「この作業とあの作業、まとめて一度に処理できないか?」「複数の場所に分かれている情報を、一箇所に集約できないか?」
- 実践例:
- Before: 午前と午後に、それぞれ別々に備品発注の依頼メールを送っていた。
- After: 依頼を一旦リストにためておき、「毎日15時にまとめて発注する」というルールに変更。作業の切り替えコストを削減した。
3.【R】Rearrange(順番を変えられないか?)
作業の手順やレイアウトを入れ替えることで、効率化を図ります。
- 問いかけ: 「A→B→Cの作業順を、C→A→Bに変えたら、手戻りが減るのではないか?」「よく使うファイルを、もっと手前のフォルダに置けないか?」
- 実践例:
- Before: 請求書を作成し、印刷してから、上司に内容のチェックを依頼していた。
- After: 印刷前に、データ(PDF)の段階で上司のチェックを受けるフローに変更。ミスがあった場合の、印刷し直しの手間と紙コストを削減した。
4.【S】Simplify(もっと簡単にできないか?)
作業そのものを、より単純で楽な方法に置き換えます。
- 問いかけ: 「もっと簡単なツールを使えないか?」「テンプレート化して、考える時間を減らせないか?」
- 実践例:
- Before: 毎回Wordでゼロから作成していた議事録。
- After: 「日時」「参加者」「決定事項」などの項目をあらかじめ用意したExcelのテンプレートを作成。当日は穴埋めするだけで議事録が完成するようにした。
小さな改善を「評価される成果」に変える伝え方と、次のステップ
素晴らしい改善案も、あなたの頭の中にあるだけでは、ただのアイデアで終わってしまいます。ここでは、そのアイデアを形にし、周囲を巻き込み、評価に繋げるための具体的な方法をご紹介します。
1.「1枚提案書」で、シンプルに伝える
まず、あなたの改善案を、以下の3つの項目でA4用紙1枚、あるいはメールの本文にまとめてみましょう。
- 【現状の課題】
- (例)現在、〇〇の申請書に記入ミスが多く、月に平均5件の差し戻しが発生しています。
- 【具体的な改善案】
- (例)ECRSの「Simplify(簡素化)」の観点から、入力ミスが起きないテンプレートを作成しました。
- 【期待される効果】
- (例)これにより、差し戻しがゼロになり、月間約2時間分の修正作業が削減できる見込みです。
2.「相談」という形で、仲間を巻き込む
「提案があります!」と切り出すのではなく、「〇〇の業務で困っているのですが、こうすればもっと楽になるかもしれないと思いまして…。一度、ご意見をいただけますか?」と、「相談」の形で上司や同僚に話してみましょう。 この謙虚な姿勢が、相手の協力心を引き出します。
さらに学びを深めるために
ECRSが「何を改善するか」を見つけるためのフレームワークだとすれば、「なぜなぜ分析」は、「なぜその問題が起きているのか」という根本原因を深掘りするための強力なツールです。
この2つを組み合わせることで、あなたの改善提案は、より本質的で説得力のあるものになります。
まとめ|あなたの「気づき」は、会社の資産になる
業務改善は、特別なスキルや権限を持つ人だけのものではありません。 それは、日々の仕事に誠実に向き合っている、あなただからこそ気づける「違和感」を、価値に変える活動です。
あなたのその小さな気づきと提案は、あなた自身の評価を高めるだけでなく、同僚の負担を減らし、会社全体の生産性を向上させる、非常に価値のある「貢献」なのです。
まずは、あなたが一番「面倒だ」「無駄だ」と感じている業務について、ECRSの4つの視点で眺めてみることから、始めてみませんか?


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