突然鳴り響く電話。受話器の向こうから聞こえてくる、厳しい声。 「一体どうなってるんだ!」 頭が真っ白になり、心臓がバクバクする。しどろもどろに「申し訳ございません」と繰り返すのが精一杯…。
そんな「クレーム対応」の苦い経験はありませんか?
事務職であっても、お客様や他部署からの厳しいご意見に対応する場面は、決して避けては通れません。そして、その最初の対応(初動)を間違えると、小さな火種が大きな炎上へと発展してしまうこともあります。
しかし、安心してください。クレーム対応は、特別な才能や話術がなくても、正しい「型」を知っていれば、誰でも冷静に対処できます。
- なぜあなたの対応が、相手の怒りを増幅させてしまうのか、その心理的な原因がわかります。
- パニックになっても大丈夫。どんなクレームも鎮める「初動の3ステップ」が身につきます。
- 「ピンチ」を「信頼回復のチャンス」に変える、一歩進んだ考え方がわかります。
なぜあなたの対応は“火に油”を注いでしまうのか?クレーム客の「本当の心理」
クレーム対応で失敗する最大の原因は、相手が「本当に求めているもの」を、私たちが理解していないことにあります。
相手が怒っている時、その言葉の裏には、実は3つのシンプルな感情が隠されています。
- 分かってほしい: 「自分がどれだけ困っているか、不快な思いをしたか、まずはこの気持ちを理解してほしい」
- 真剣に聞いてほしい: 「自分の話を、遮ったり、言い訳したりせず、一人の人間として真剣に受け止めてほしい」
- 誠実に対応してほしい: 「面倒な客だと思わず、会社として、誠実に対応してくれる姿勢を見せてほしい」
つまり、相手は「完璧な解決策」よりも先に、「感情的な共感」と「誠実な態度」を求めているのです。
これを知らずに、以下のような対応をすると、相手の怒りは一気に頂点に達します。
- NG例①:「私は担当ではないので…」 → (私の話を真剣に聞く気がないんだな…)
- NG例②:「しかし、それは〇〇という理由でして…」 → (言い訳ばかりで、気持ちを分かってくれない…)
- NG例③:「とにかく、確認しますので!」 → (誠実に対応する気があるんだろうか…)
クレーム対応とは、相手の「怒り」という感情の奥にある、「困っている」という本質に寄り添うことから始まるのです。
【保存版】どんなクレームも鎮める「鎮火の3ステップ」初動対応マニュアル
では、具体的にどうすれば良いのでしょうか。パニック状態でも思い出せるように、行動を3つのステップに絞りました。この順番さえ守れば、大丈夫です。
Step 1:まず「謝罪」と「傾聴」で、相手の感情を受け止める
最初にやるべきことは、事実関係の追求ではありません。相手の感情の波を、あなたが受け止める防波堤になることです。
- 魔法の第一声(クッション言葉):
- 「〇〇の件で、ご不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございません」
- 「貴重なご意見をいただき、ありがとうございます。まずは詳しくお話をお聞かせいただけますでしょうか」 ポイント: ここでの謝罪は、非を認めるものではなく、「不快な気持ちにさせてしまったこと」に対する共感の表明です。これを最初に伝えるだけで、相手の興奮は少し和らぎます。
- 徹底した「傾聴」: 相手が話している間は、絶対に話を遮らない。ただ、ひたすら聞くことに徹します。「はい」「ええ」と相槌を打ちながら、相手が話し尽くすまで、安全な“話す場”を提供してあげましょう。
Step 2:「事実確認」と「復唱」で、認識のズレを防ぐ
相手が少し落ち着いたら、次に「事実」を整理するフェーズに入ります。
- 冷静に、5W1Hを聞き出す: 「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「なぜ」「どのように」そうなったのかを、感情的な言葉の中から冷静に聞き取ります。
- 最強の武器「復唱確認」: 「〇〇様、お話を整理させていただきます。△月△日に、私どもの担当者□□が、〇〇というご案内をした、というご認識でお間違いないでしょうか?」 このように、聞いた内容を自分の言葉で要約し、復唱して確認することで、相手は「ちゃんと話が伝わった」と安心し、あなたも正確な情報を把握できます。
Step 3:「今後の流れ」と「担当者」を明確に伝え、安心させる
事務職のあなたが、その場で最終的な判断を下す必要は全くありません。あなたの最も重要な役割は、「責任を持って、担当者に引き継ぐ」という約束を、明確に伝えることです。
- 約束の伝え方:
- 「お聞かせいただいた内容を、担当責任者でございます〇〇に正確に申し伝えます。この後、本日17時までに、〇〇より改めてご連絡を差し上げてもよろしいでしょうか」
- ポイント: 「いつ」「誰が」「何をするか」を具体的に伝えることで、相手は「たらい回しにされるのではないか」という不安から解放されます。この「具体的な約束」が、解決への第一歩となり、あなたの対応への信頼を生みます。
クレームを「信頼」に変える人の共通点と、さらに学びたいあなたへ
基本の3ステップをマスターすれば、クレーム対応はもう怖くありません。最後に、さらに一歩進んで、ピンチをチャンスに変えるための考え方をご紹介します。
クレームを信頼に変える人の共通点
彼らは、クレームを「面倒なトラブル」ではなく、「お客様の期待の裏返しであり、自社のサービスを改善する絶好の機会」と捉えています。
誠実な対応によって問題を解決できた時、相手は「ただの顧客」から、あなたの会社の「熱心なファン」に変わることさえあるのです。
さらに学びを深めるために
クレーム対応の高度なスキルとして、「アサーティブコミュニケーション」という考え方が非常に役立ちます。これは、相手の意見や感情を尊重しつつ、こちらも言うべきことは誠実に、しかし攻撃的にならずに伝えるためのコミュニケーション技術です。
このスキルを学ぶことで、より複雑な交渉や調整が必要な場面でも、冷静に対応できるようになります。
まとめ|誠実な初動対応は、会社の“信頼”を守る仕事
クレーム対応は、決して押し付けられた雑務ではありません。それは、会社の危機を未然に防ぎ、お客様との関係を再構築する、非常に価値の高い仕事です。
正しい手順を知り、相手の気持ちに寄り添う姿勢さえ忘れなければ、あなたはもう何も恐れる必要はありません。その誠実な対応が、あなた自身への、そして会社への信頼となって、必ず返ってきます。



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